フランスに来て、こちらのキャッシュカード(通称カルトブルーG、クレジット機能も付いている)は2種類持っている。これは単に2つの銀行(BNP ParibasGとHSBCG)と契約しているからだ。
フランスは確かにカード社会で、レジやレストランでの支払いはたいていカードで済ますことが出来る。日本と同様に4桁の暗証番号があり、これをピッピッピッと押せば良いわけだ。日本でも、最近はサインなしでこの番号入力のみで決済できるところが増えているのではと思う。で、この4桁の暗証番号というのは、日本と違って自分で好きな番号を選べるわけではなく、任意のやつがカードとは別郵便で送られてくる。
ちょうど1ヶ月ぐらい前だろうか。とあるレストランでワインなどを飲みつつ、おいしい食事を堪能して、いつものようにHSBCのカードで支払いを済ませようと思ったわけだ。だが、ここで暗証番号が出てこないことに気が付いた。「あれっ、なんだったっけ?」
頭の中で、1本の線維が1個の記憶を保持していて、それらが束になって膨大な記憶を形成しているとしよう。その記憶の束から暗証番号が記された1本の線維がすっと抜き取られたかのように、完全に暗証番号の記憶が飛んだのである。それまで、そのカードを使って何度も入力をしていたにもかかわらず、きれいサッパリ自分の脳から消失してしまった。俗にいう「ど忘れ」というやつか。しかし、まるで思い出せる気がしなかったし(ど忘れなら後から思い出すことも出来よう)、ど忘れよりも程度がひどく感じられもう思い出すことはないなと思った。「あぁ、これは無理だ。」完璧な記憶の消失だった。
とりあえずその場は、もう1枚のカードも持っていたので、それで支払いを済ませた。家に帰れば、暗証番号が記された郵便物もあることだしなぁと。
帰宅して書類棚をゴソゴソ。だが、その暗証番号が書かれた郵便物が見あたらない。引越して書類やらを整理していた際に間違って捨ててしまったのだろうか。相変わらず、暗証番号はまるで思い出せる気がしないし、まぁもう1枚カードがあるから良いかぁと、もう番号が何だったかなんて思い出すことは諦めることにした。
そんな感じで1ヶ月が過ぎただろうか。それは突然やってきた。昨日、実験中に、ふと4桁の数字が頭の中に浮かんできたのだ。XXXX。
「あれっ、何だ、この番号は?」それが最初のリアクションだった。すぐさま、「あれっ、これってもしかしてあのカードの暗証番号か?」と自問する。暗証番号のような気もするけど、どうも確証が持てない。「XXXX。」その番号を忘れないように復唱しながら、とりあえず帰宅途中に、ATMで試してみるかと計画を練った。
パリは至る所にATMがあり、カルトブルーであれば、どこの銀行のやつでも(確か手数料無料で)気軽に引き出せる。もし、暗証番号が違っていても、「あぁ、やっぱり違うか。」で取引を中止すれば良い。
メトロ(地下鉄の駅)を上がってすぐのところにATMがある。ちょっぴりハラハラしながら、その4桁の番号を試してみる。引き出す金額はとりあえず最小の20ユーロだ。
暗証番号を押して、待つこと10秒弱。「あれっ、ちょっと長い?」ドキドキ。「カードを忘れずにね」とのメッセージが画面に出る。その数秒後、10ユーロ札が2枚ジジジッと出てきた。
「おぉー、この番号やん。やっぱ、この番号やったんや。」正直、現金が出てくるまでほんとにこれが暗証番号なのか自信がなかった。ホントにこんな番号だったかなぁ。そんな気もするし、そうでない気もしていたから。だが、実際にお金が出てきた。確かにこれだ。もう忘れないぞ。
どうして、いきなり記憶が戻ったのか分からない。抜き取られ消失したと思われた記憶の糸は、実はちぎれただけで(アルコールのせい?)それが再び繋がったのだろうか。
記憶って、一体どういう形態で保持されているんだろうね。電気信号とかシナプスの可塑性なんかが絡んでいる気がするなぁ。














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脳は、右と左でも役割が違いますし、イメージとして情報を保持する部分と、人の名前などを保持する部分は違う箇所にあると思います。おそらく記憶が得意な人というのは、その辺りの情報のやり取りがニューロンのシナプスレベルでスムーズなんでしょうね。ひとつで全部をまかなうのは無理なので、役割分担させている。その部分と部分とのネットワークのスムーズさが個人差として表れているのかなぁと。そのスムーズさというのは、ニューロンの端っこでやりとりされる神経伝達物質(アドレナリンとかドーパミンとか)の量の問題だったり、それらをキャッチする受容体の問題だったりするのでしょう。